捨てられないもの

お題「捨てられないもの」

 

自室の作業用の机と合わせて設置した天井まで届く大きな本棚には、これでもかというくらいに本が入っている。

学生時代に勉強した教材、仕事を覚えるために買った書籍、興味がわくまま買いそろえた趣味の本、果ては小学校の時に買ってもらった絵本まで。もう使わないかと取り出す度に、今でも少なからず愛着や関心を持っている自分に気付く。

物が無くてすっきりした家に憧れながらも、自分には無理だなと思ってしまうのはこんな時だ。

本棚はその人の人格を表すと言う人が居る。

私にとっては、この本棚は私の生きてきた歴史である。生きてきた中で私が興味を持ったものたちがこの本棚にはひしめいている。それらが今の私の人格を作っているのだとすれば、この本棚が私の人格を表しているというのも間違ってはいない。

だからだろうか。

私にとってこの本棚から本を一つ捨てると言うことは、自分を形成する要素を一つ捨てるようなものだ。それはもう過去の自分で、今とは関係ないと切り離すようなものだ。そうすることに、私は何か強い抵抗を感じるのだ。

私は不完全な人間で、この本棚に収まっている知識すら、完璧に自分の物にはできていない。できることなら、自分はもう使わないという理由では無く、本を読み返す必要が無いほど知識が根付いているという理由で本を手放したいと思う。

いつになるのやら。