おじさんとおばさん

「30歳以上の女の人は、みんな『おばさん』でいいでしょ?」

 

とある男性からそう言われて、いや、それはちょっと止めたほうがいいと私は言いました。敵に回す相手が多すぎます。

 

「じゃあ、40歳以上なら『おばさん』でいい?」

 

重ねて聞かれて、おや、どうもそれも違うぞと私は思いました。なぜって、その論法でいくと私の敬愛するあの方やあの方まで「おばさん」ということになってしまいます。それはどうにも容認しがたい。

 

年齢の問題じゃないのだと私が言うと、彼は

「年をとった男は『おじさん』なんだから、年をとった女は『おばさん』でしょ?」

と言います。

 

確かに。言葉の定義の上では。

しかし「おばさん」という言葉には、そういった定義以上に、外見や雰囲気において女性的魅力が著しく欠けているという強いマイナスイメージが染み付いているのです。

 

「素敵なおじさん」という言葉はあっても、

「素敵なおばさん」という言葉はありません。

 

「おじさま」と「おばさま」ならば確かに対等。

けれど、「おじさん」と「おばさん」はけっして同格ではないのです。

 

それは若さと美しさを女性の価値としてきた時代が長かったせいなのだろうけど、面白いなと思ったのは、そういう価値観に反発しているはずの女性の側にこそより強くこのマイナスイメージが根付いているように思えることです。

 

そういえば「おばさん化ストップ」のようなアオリも女性誌でよく見ます。

女性の容姿の評価により厳しいのも、やはり同じ女性です。

 

年を取り、美しくなくなった女性=「おばさん」というマイナスイメージは当然男性にもあるだろうと思っていたのですが、どうもその意識は女性の方がより過敏らしい。

 

だから男性から「おばさん」などと言われると、

女性は「なんて侮辱を!」と憤慨し、

言った男性はきょとんとしているという奇妙な現象が起きるのですね。

 

でもこれ、単に女性の気にしすぎと言っていいのでしょうか。

女性であればたとえ小学生であっても、容姿による扱いの差を感じたことのない人はいないでしょうし、

年齢や見た目、もろもろを理由とするけなし言葉としての「おばさん」を耳にしたことのない大人なんて、男女ともにいないでしょう。

女性が男性よりもこの言葉に過敏になる理由があるとしたら、それによって傷つけられる側だからなのではないでしょうか。

傷つけられたくなくて過敏になるあまり、自家中毒を起こしている面はあるにしても。

 

「おばさん」という言葉自体に罪はない。

ですが、けなし言葉としてある程度定着してしまっている以上、

気軽に使うのは控えて頂けませんかね。

 

それでまぁ、結論としましては。

 

「おばさん」ではなく敬意をこめて、「年上の女性」と呼んでください。